【移転・原状回復工事ご担当の皆様へ】賃貸借契約書には原状回復工事費の支払先を明記せよ ―課題は入居前から存在する―
皆さん、こんにちは。
アット・ファシリティラボ株式会社の蒲池です。
前回のコラムでは、「飲食店を出店するなら、居抜き物件を借りるのがお勧めです」とお伝えしました。
過去に入居していた店の内装や設備を再利用すれば、開店にかかる初期費用を安く抑えることができるからです。
実は、企業のオフィスにおいても同じことが言えます。
今回は、オフィスを移転する際の原状回復工事について、企業の皆様に知っておいていただきたいことをお伝えします。
コロナ禍でオフィス需要が激変
ここ2年のコロナ禍で、ビルの移転・解約・家賃下落が多発するなど、企業オフィスを取り巻く環境は激変しました。
大勢の社員を抱えて大口の契約をしている企業は「こんなに多くのオフィスは不要だ」と気づき始めたのです。
その結果、保有物件を減らして外部のサテライトオフィスを利用するなど、傾向が明らかに変わりました。
オフィス移転も居抜き物件が最良
オフィスを移転する場合、自分で後継テナントを見つけるケースが増えています。
そしてオフィス家具、什器、パーテーションなどの所有権を、そのまま譲渡しています。
つまり飲食店同様、最も効率的なのが居抜き物件なのです。
ただ、このようなケースは、全体の1割にも達していないはずです。
というのも、必要な時に必要な物件に出会えるかどうかは、タイミングに左右されるからです。
そのため退居するほとんどの企業は、原状回復工事の実施を余儀なくされています。
原状回復工事費の支払いを断ったテナント
しかし最近、こんな例がありました。
電鉄系の駅ビルに入居しているテナントさんのケースです。
ビル側に原状回復工事費用を請求されたテナントさんは、何とそれを断りました。
賃貸借契約上は、あらかじめ引き渡し日が決められています。
テナント側に決定権があるのは引き渡し日までで、それ以降はビル側に権利が移ります。
ところがこのテナントさんは、「引き渡し日を超えたとしても、
施工が確定した段階で精算させてください」と打診したところ、それが通ったのです。
業界的に、極めて異例の事かと思いますが、それが常識とするために、我々は尽力していきます。
工事やります詐欺
このテナントさんの判断は正しかったと思います。
何しろ、ビル側が原状回復工事を本当に実施するかは分からないからです。
ビル側としては、居抜きで入居してくれる新たなテナントが見つかれば
工事費は丸々浮くわけですから、後継者を探している間は工事に着手しないのです。
施工が未定であるにも関わらず金銭を要求するのは、私に言わせればまさに「工事やります詐欺」です。
「とりあえず2千万円を置いて出て行け」と言われれば、
「使わないかもしれないお金を、なぜ置いて行く必要があるのか」と思うのは当然です。
しかしコロナという災害によって、上記のテナントさんのような動きが見られるようになりました。
テナント側が不本意に退居せざるを得ない場合が発生するため、それにビル側が歩み寄る形です。
入居契約時に退居のことまで考えておく
本来は、入居契約時に退居する場合のことまで考えておくべきなのです。
しかし入居時には皆がハッピーな気持ちになっていて、そこまで思考が及ばないのが普通です。
賃貸借契約書には原状回復工事についての記載がありますが、詳しくは書かれていません。
わずか4~5行程度で、しかも詳細まで目を通す人は少ないのです。
そのため、退居する時に慌てることになってしまいます。
つまり、原状回復工事の課題は入居する前から存在するのです。
契約書に書かれている以上、原状回復工事費を請求されれば支払わなければならないのが現実です。
さらにデベロッパーなどの仲介業者が入ると、500万円で済むはずの工事費が、1,000万円、1,500万円と膨らみます。
施工業者に直接支払う手もある。工事費用は交渉次第
そこで、入居時の契約書には、
「退居する際、引き渡し日を超えていても、原状回復工事を実際に施工した会社から請求された金額を振り込む」
と明記するべきなのです。
ただ残念なことに、多くの方はこの方法をご存じありません。
この文言を入れたとしても、施工業者とオーナー、またはデベロッパーと
裏で手数料乗せの話がついているケースも当然あります。
ビル側が「施工業者にテナントが直接お金を払う」という条件を認めることは、ほとんどありません。
というのも、原状回復工事にはビル側にもお金が入る仕組みが組み込まれているからです。
多くの場合、ビル指定の業者を使うように求められ、その中にビル側の利益分が含まれているのが実情です。
つまり、ビル側にとってはこの工事が、ある種の“儲けどころ”になっているわけです。
そのため、テナントが「自分で業者を選んで、直接支払いたい」と申し出ても、
ビル側としてはその利益を手放すことになるため、まず認められないのが現状です。
しかし、打診してみる価値はあります。
100%は認められないとしても、どこまで歩み寄れるかは交渉次第です。
こうした交渉を行うのは、素人にとっては至難の業です。
実際、企業側の移転ご担当者が持っている交渉材料は
「予算が限られているから」「上司にそう言われているから」といった
抽象的で説得力に欠けるものがほとんどです。
相手(ビル側)から見れば、「それは御社の都合ですよね?」で終わってしまう話になりがちです。
仮に、自社が坪あたり10万円の予算を組んでいたとします。
工事費がその範囲に収まるのであれば、そのまま発注することが多いでしょう。
しかし交渉のプロである弊社なら、工事の内容や廃棄される有価財を確認して
「坪7万5千円まで落とせます」と具体的に言うことができます。
私たちには、デベロッパーが出した工事見積に対して、価格を下げる方法をロジカルに提案できる根拠があるのです。
アット・ファシリティラボの交渉術
弊社にご依頼いただく場合、ビル側に退居を通告する時点でご相談いただくのがベストのタイミングです。
見積が出た段階で弊社にバトンタッチし、
ご担当者から「今後の折衝は、アット・ファシリティラボが行います」と伝えてください。
そして先方に、私のアドレスをCCに入れたメールを送っていただきます。
メールの文面は私が作成します。
あとは私とビル側のやり取りを、ただ見ていただくだけで結構です。
ここで、弊社の役目をご説明しましょう。
例えば、ビル側の出した見積金額1,000万円に対し、弊社が妥当値まで下げた「目論見書」を作成します。
そして、これを元にビル側と話し合います。
次回は、見積書の全項目を精査した書類を持参して交渉します。
「なぜ、こんなに高いのですか」と問い詰めれば、
相手は「こういうものだから」としか答えられず、明確な根拠を示すことができません。
細かく交渉を重ねれば、工事費用を平均10~25%程度削減できます。
こうして引き下げた額面の30~40%を、弊社が成功報酬として頂く仕組みです。
成功報酬をお支払いいただいたとしても、施主様にとっては
当初の見積よりも低い費用で施工ができるため、大変ご好評をいただいております。
廃棄物の売却益を施主様に返金
これとは別に、有価財の売却益も見込むことができます。
まず、不要な家具などをプラスの資産として算出します。
さらに、工事では配線・金属くずなどが排出されますが、
図面を参照しながら現場を見た上で、おおよその買取額を定めます。
これらの有価財は見積書では廃棄費用として計上されているため、
売ればお金になる物を、施主様はわざわざお金を払って廃棄を依頼されていることになります。
弊社はこれを、施主様に返金します。
このような査定ができる会社は、他にありません。
ここに弊社の介在価値があるのです。
また、産業廃棄物業者は廃棄費用を請求しながら、仕分けた有価物を売却しており、
いわばダブルインカムで利益を得ている構造になっています。
旧態依然とした業界の文化では、「発注者はこのカラクリを知らず、
納得して費用を支払っているため、このままで問題ない」と考えられています。
だからこそ、私たちはこの現実を広く世の中に伝えていきたいと考えております。
ただ、弊社をご利用いただくかどうか、ご担当者に温度差があることを寂しく思う時もあります。
ご担当者の中には、
「新たな取り組みを始めるのは面倒だ。それに、社内で説明するのも手間がかかる」と感じる方もいらっしゃいます。
その結果、「予算内に収まっているので」と辞退されることがあるのです。
環境問題やSDGsにも貢献できる
しかし先日、こんな事例がありました。
ある会社では、移転先のオフォスに以前から施されている内装や設備の8割を、そのまま使用するということでした。
おそらく、新旧両企業の間で譲渡契約を結んでいるのでしょう。
このように動産資産の処理が企業間で完結する様子を見て、今後はこれが自然の流れになるのだと感じます。
まだ使える物を捨てるのではなく再利用すれば、原状回復工事は発生しません。
バックオフィスから利益を生み出す、まさに「戦略総務」です。
環境問題やSDGsの観点からも、こうした考え方が今後求められるようになるはずです。
企業の移転ご担当者の皆さん。
このような形で世の中に貢献することも、御社の大切な役割だと思いませんか?
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